熱硬化性樹脂は、熱を加えると重合して架橋を形成し、再度加熱しても融解しない樹脂である。機械的強度、熱安定性、寸法安定性、耐溶剤性に優れている一方で、透明性がない、再利用が利かないといった欠点がある。主な熱硬化性樹脂には、フェノール樹脂(PF)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、ユリア樹脂などがある。用いられる成形法は、圧縮成形(直圧成形、コンプレッション成形)、トランスファー成形、射出成形、積層成形である。
繊維強化プラスチックは、プラスチックにガラス繊維などの繊維を強化材として混ぜ合わせた複合材料である。マトリクスには熱硬化性樹脂を用いることが多く、強化材にはガラス繊維をはじめ、炭素繊維、金属繊維、綿布、紙などが用いられる。
圧縮成形は、加熱された金型内に熱硬化性樹脂成形材料を投入して金型を閉じ、加圧しながら加熱溶融して十分に重合、固化させた後に成型品を取り出す成形法である。まれに、熱可塑性樹脂成形にも用いられる。直圧成形法の利点は、
ことなどが挙げられる。その一方で、複雑な構造の成型品の成形には向かないことや、成形には熟練の技術が必要となるので大量生産には向かないことなどが欠点である。
トランスファー成形は、加熱されたトランスファーチャンバに熱硬化性樹脂成形材料を投入し、加圧・加熱しながらあらかじめ密閉された金型内注入して十分に固化させた後に成型品を取り出す成形法である。圧縮成形の改良版であるトランスファー成形法の利点は、
ことなどが挙げられるが設備や金型の費用が高くなる。
成形の際に、ボビンのつばのような大きなアンダーカットなどがある場合には一方向に取り出すことができない。割型(ばらし型)とは、成形後に金型を適当に分離して取り外せるようにしておくことで、アンダーカットを持つような構造の複雑な製品の成形を可能する。ただし、金型の構造が複雑になり、高価になる。また、成形時の障害の原因になりやすい。
インサート成形は、ネジ付金具や金属部品などのインサート(埋め込み金具)を必要に応じてあらかじめ金型に仕込み、成形することで成型品にインサートを埋め込む成形法である。熱硬化性樹脂の成形の際にはよく用いられる。インサートの素材にはには黄銅を用いるのが一般的である。その他の素材には、リン青銅、アルミニウム、銀、洋白(洋銀)などがある。
フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドを原料とし、縮重合によって合成される熱硬化性樹脂である。電気的、機械的特性が良く、樹脂の中でも耐熱性、難燃性に優れている。成形性は良いが鮮明な色が出せない。充填材にはガラス繊維、綿布などが用いられ、成型品の用途としては、電気・電子部品、機械部品などが挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステルに架橋材、触媒を加え、重合によって合成される熱硬化性樹脂である。ガラス繊維との組み合わせで高強度を出すことができる。また、耐アーク性、絶縁耐力が良く、低圧力での成形が可能である。主な用途は、重配電機器・機械装置部品などが挙げられる。
エポキシ樹脂は、エピクロルヒドリンとビスフェノールを原料とし、縮重合によって合成される熱硬化性樹脂である。電気特性(耐湿性)に優れており、流動性も良いが材料の保存性が悪い。充填材にはガラス繊維などが用いられる。主な用途は、電気・電子部品、封止材料(IC・LSI部品など)である。
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドを原料とし、縮重合によって合成される熱硬化性樹脂である。硬度が高く、耐アーク性が良い。また、着色が自由に行え外観が良い。主な用途は、食器、日用品などが挙げられる。
ジアリルフタレート樹脂は、ジアリルフタレートを部分的に重合して得られるプレポリマーに充填材、硬化剤を配合して作られる。電気的には最高級の物性を持ち、耐熱性が高く、寸法安定性に優れており、高価である。主な用途は、電気・電子機器、原子力、宇宙開発分野などの高級電子絶縁材料である。